わたしの想いがとどくように


なんで気が付いてしまったんだろう。ただの一瞬のできごとだったはずなのに
だから嫌なんだ。こうやって幸奈は自分の中に入ってくる。顔にだしちゃいけない。ここはにっこり笑ってありがとうと言わなくては…
嬉しいけれど、辛い、悲しい、虚しいの感情が渦巻いた。幸奈の気持ちはわからない。
幸奈の行為は全部が家族のためだから、自分は兄弟みたいなものだから、
平気でそんなことをする。
弥生は一瞬下唇を噛んでから、笑った。

「ありがとう!」

「別に」

弥生は大事に鞄にしまった。
しかし、辛かった。美華子がいるのに、もう優しくしないで欲しい。
優しくされる度に苦しくなるだけだ。
幸奈は分かってない。だからいつも、我慢する。
1回の我慢がだんだん大きくなる。
でも、涙の止め方も知っている。
弥生は美華子や友達のところに行った。

「弥生、私からもプレゼント」

美華子がそう言うと、渡してくれたのは、髪飾りだった。
美華子は本当に綺麗で優しい女の子だった。
だから、モテる。気配りが上手くて、女の子らしくて、昔から羨ましかった。
幸奈だって好きになる理由が分かる。

「喜んでもらえるといいのだけど」

弥生は抱き付いた。
可愛い美華子、大事にしなくては、だから自分が我慢すればいい。
2人とも大事だから、2人が幸せならそれを大切にしたい。
自分の心がどんなに傷ついても平気だ。

「ありがとう!大事にするね!」

「うん、良かった」

美華子が優しく笑った。弥生は少し罪悪感があった。
幸奈を好きでいることが、こんなに辛いなんて思わなかった。
胸が締め付けられる。でも、泣いたりなんかしない。
少し暁を見た。暁はこの頃付き合いが悪かった。弥生は少し気になった。