6月になる。6月7日が弥生の誕生日だ。
いつも、弥生は盛大にパーティをするのが嫌いだった。
皆と仲良くするくせに、そういうのは気持ちがこもってなさそうと嫌いなのだ。
祖父も分かってくれ、弥生の誕生日は家族だけで過ごす。
朝、着替えいると、沙也がプレゼントを用意してくれていた。
「弥生ちゃんにプレゼント!」
にこにこ笑いながら両手で小さい袋を差し出した。
「なんですか?」
「ストラップですよ」
弥生は、手渡された。ビーズの可愛いストラップだ。
弥生は受けとると、すぐに携帯につけた。
「ありがとう!可愛いです!」
弥生は緑色の携帯電話で、ストラップは黄色とオレンジのビーズで作られていた。
「今日は、紙袋持って行ってくださいね」
沙也は、大きい紙袋を弥生に渡した。
「はーい」
弥生は紙袋を受けとると、カバンに入れた。
食堂には誰もいない。
幸奈が美華子と一緒に登校するようになって、
弥生はいつも朝早く出るようになり、幸奈が委員会の仕事のときは、ゆっくり学校に行っていた。
弥生はゆっくり食べてから家を出る。
「いってきます!」
「いってらっしゃい」
弥生は靴に履き替えてから、すぐに家を出た。
弥生は、周りをみた。夏が来ている。まだまだ初夏だが、紫陽花が咲き出している。
「紫…ブルーベリーのヨーグルトの色!」
弥生はそう言うと、機嫌良く街を歩いた。
少し気になり、携帯のワンセグでニュースを見ていた。
海外のニュース、日本人のニュース、芸能ニュースいろいろと流れるなかで、
弥生はいつも海外のニュースに興味を持っていた。
なりたいもの、今まで考えなかった。
祖母の行っていた言葉が、頭をかすった。
『弥生なら強く生きられるわよ』
その言葉、自分が強くいきるためには、やりたいことを見つけることが大切なんだ。
弥生はそう思った。
やりたいこと、海外でなにかやりたいと弥生は思った。
弥生が学校についたときは、誰もいなかったがだんだん人が増えて行くと、
皆からおめでとうと言われた。
その度、弥生は笑顔で対応していた。嬉しかった。
プレゼントも沢山貰った。他の学年もクラスからも来てくれていた。
お昼になり、幸奈は弥生に振り返った。
「プレゼント」
それだけ言うと、片手で小さい箱を差し出した。弥生は感激して、両手で受け取った。
「ありがとう!見ていい?」
「…ああ」
弥生は箱を空けると、ブレスレットが入っていた。弥生が欲しかった。ネックレスと同じデザインのブレスレットだ。
幸奈には一度だって言わなかった。欲しい素振りだって見せなかった。
買ったときに見ていただけだった。それも1年前だ。

