Anna.side

「僕、そろそろ帰ろうかな」


来夢が呟いた。

壁の時計は20時を指している。

そうだよね、帰らないと…

「大丈夫?杏菜」

「え?大丈夫だよ」

「本当?」

「本当。」

嘘。


本当は怖くて、怖くて、しょうがない。

今日は親も帰って来ない。


「じゃあ、僕、帰るね」

「うん」




言葉はそう言っているのに体は反対のことをする。

「ん?」

私はいつの間にか来夢の服を握っていた。


「行かないで…」


言葉までもが言うことを聞かなくなる。



「あっ…ごめんなさい…迷惑、だよね…」


あ〜。

やっちゃった。


怒られちゃう。