おっと、学校に行く時間だ。

急がなきゃ。

高校生ってめんどくさいよね。

制服とかスカート上げて、ネクタイつけて、化粧しなきゃいけないんでしょ?

なーんでこんなにめんどくさいかなー。

髪の毛とかは魔法でぱぱっとやれるんだけど、化粧とか服とかは自分でやらなきゃだから、毎朝大変。

なのに、朝は早いし。

なんで7時半に家出なきゃ遅刻なんだよ。

みんな何時に起きてるわけ?

6時とか?

無理でしょそんなの。

あーもー!

朝ごはん食べる時間がなーい。

「いってきまーす」

自転車に飛び乗っていざ出発!

汗だくになって駅に到着。

ここからは私達、女子高生の戦場です。

毎朝毎朝毎朝、狭い満員電車の中でしょーこりもなく触ろうとしてくる痴漢。

何度も痴漢の手を払っても、わらわらわらわらとゴキブリのように出てくる。

それでなくてもぎゅうぎゅうで辛いのに。

正直、魔法で鳥とかになって学校まで行きたいと毎日思う。

鳥だったころが懐かしい。

が、世界を観察するためにこれぐらいは我慢しなくては。

それに、この時間、この車両には。

「二ノ宮おはよ」

「おはよ」

二ノ宮はあたしの名前。

二ノ宮 山花(ニノミヤ サンカ)って今は名乗ってる。

さすがに人間社会でナンバーズNo.23なんて言えないから。

で、今、挨拶してくれた彼は綾瀬悠真(アヤセ ユウマ)。

あたしの大好きな人、彼に絶賛片想い中。

彼が乗るから毎朝、こんな超満員電車に乗っている。

勿論、そのことは上には報告なんてしてない。

綾瀬くんはいつも、扉付近にいるあたしの隣に来てくれる。

そこで、他愛ない話をするのが堪らなく嬉しい。

できるだけずーっと、一緒にいたいけど、そろそろナンバーズの定期集会がある。

この生活を始めてもう、二年半。

多分、5日後の定期集会で、二ノ宮 山花は消えることになると思う。

学校を転校して、firstから指示された場所で指示通りの生き物になるんだろうなぁ。

綾瀬くんと一緒にいたいから、定期集会ボイコットしちゃおっかな。