二日後のこと。
牧師はいつものように村へ来た。
だが、今日はいつもよりも大きな馬車を三台連れていた。
馬車は集会場で停止し、
二台の馬車中から国の騎士がわらわらと出てきた。
さらに、残りの一台の馬車の檻中には檻が積まれている。
「牧師様?今日はどうしましたか?」
村人全員がいつもとは違う異様な雰囲気に集まった。
村長が代表として牧師に質問する。
牧師はいつものように微笑み、答えた。
「魔女がこの村にいます。
今から退治しますので手出ししないでください。
邪魔をする人は反逆者として、一緒に捕らえます」
エマルニアのことがバレたのだ。
「みな、準備はよいか?」
俯いて、ゆっくりと村人に問いかける村長。
村人は全員頷く。
その瞳は覚悟を決めた戦士のように輝いている。
村長は顔を上げ、牧師を睨み
叫ぶように言った。
「では、かかれぃ!」
村人は全員、一斉に動いた。
まず、村の中で一番足の速い青年が、エマルニアの家へ走る。
エマルニアを逃がすために。
その他の村人は武器を片手に、
騎士と牧師の周りをぐるりと囲んだ。
男性が内側に、女性や子供は外側に。
それは一瞬のことだった。
統率の取れた動き、
まるで訓練された軍隊のように牧師には見えただろう。
「行かせはせん。エマルニアは魔女ではない、私達の大切な家族だ」
村長が叫び村人もその声に同調した。
死ぬのも覚悟で、村人はエマルニアを守る。
牧師が来てから、彼らはエマルニアのため、覚悟を決めていた。
「貴様らキリスト教に逆らうつもりか!異端者共め」
牧師の周りにいた騎士が剣を抜き、威嚇する。
勿論、村人は誰一人として怯んだりしない。
ポツリ、ポツリ。
雨が振りだした。