もう、アイツが何を考えてるのかわからない。
深い溜め息が出た。
仕方ないので、言われた通りにいつものように行動することにする。
いつものように、自転車をこぎ、いつもの電車に乗る。
綾瀬くんと出会えるあの時間のあの車両に。
「おはよう二ノ宮」
いつも通りの格好いい笑顔と共に綾瀬くんはあたしの隣に来てくれる。
しかも、さりげなくあたしを壁側にし、人から守ってくれた。
恥ずかしいけど、綾瀬くんに守られてるこの感じが嬉しい。
まるでもう、恋人になった気分。
下から綾瀬くんを見上げる。
今日の綾瀬くんはいつもより格好良く見えた。
きっと1ヶ月の猶予をもらうことに成功したからだ。
「おはよう綾瀬くん」
あたしも、綾瀬くんに満面な笑みを浮かべ挨拶をする。
少し顔が赤くなってる気がしたけど、それは仕方ない。
微笑んでくれる綾瀬くんが格好いいのが悪い。
綾瀬くんとは昨日の放課後の話をした。
綾瀬くんはバスケ部。
自分の好きなことを話してるときの綾瀬くんは輝いて見える。
ボールを上手く取れなかったこと、転んだこと、シュートを初めて入れたこと。
基本、失敗談ばかりだけど悲観なんて全然してなくてやる気に満ち溢れた顔をして話してくる。
「あのシュートは凄く興奮したよ」
今日はよりいっそう輝いて話してる綾瀬くん。
運動音痴の彼は普段失敗談しかできない。
でも、綾瀬くんはバスケは大好きだから話してるときは、顔が輝いてる。
そんなとこ、やっぱり大好きだ。
ガタッと電車が揺れる。
とんっとあたしの真横に手がおかれる。
綾瀬くんの顔があたしの近くに、吐息があたる距離。
顔が赤くなっていく。
思わず俯いた。
「あっぶな。二ノ宮大丈夫?」
心配そうな顔をして尋ねてくる綾瀬くん。
大丈夫って言おうと思って顔を上げる。
すると綾瀬くんは顔を背けた。
あれ、あたし、なんか変な顔をしてたっけ。
確かに顔赤くなっているだろうけど。
「あたしは大丈夫だけど……綾瀬くん?あたしの顔になんかついてた?」
不安になって問い掛ける。
綾瀬くんはなんでもないと答えると、さっきの話の続きを話始めた。
手はそのままだ。
あれ、これって壁どんってやつなんじゃないの?
ちょっとドキドキしてる。
