15世紀初頭 イギリス




ある村の外れにエマルニアという娘が住んでいた。

黄金色に美しく輝く長いさらさらの髪に


左目が緑色、右目がブルーのオットアイ、


すらりとしたその深紅のドレス姿。



美しき娘、エマルニアは18歳。



しかし、両親もなく一人暮らしの彼女は、魔女であった。



使い魔の梟と共に暮らすエマルニアは、助言者。


彼女は強大な魔力を持ち、未来を見透す力を持ち、 


その力を生かし村人の悩みや、困り事を解決していた。



村人は彼女を信頼し、彼女もまた、この暮らしが気に入っていた。



しかし、そんな幸せな暮らしにも終わりが訪れる。








その村にキリスト教の牧師がやって来た。

牧師は村人に問う。


「助言者とは誰だ?」


牧師の話によると、助言者の占いがよく当たると、街にまで噂が流れているようだ。

そこでキリスト教壇が魔女ではないかと疑っているとのこと。




村人はエマルニアを庇った。


「申し訳ない、私達にはわかりません」


村の長が頭を下げる。

この国で最も位の高いキリスト教の信者に、嘘をついたのだ。

バレれば死ぬかもしれない。

でも、村人全員でエマルニアを守った。


「わかりました。今日は帰ります」


失礼しましたと牧師は村人に微笑み、来た道を引き返していった。

その日から、牧師は信者を連れて毎日村人へ来た。

そして、村人に言うのだ。


「魔女は悪の手先」


「悪は滅ばさなきゃ幸せにはなれない」


と。


だが、村人はエマルニアのことを庇い続けた。

みんなエマルニアを魔女だとは思っていないのだ。

子供も、大人も、お年寄りも、みんな彼女が大好きだったのだ。




しかし、村人は毎日、牧師が来ていることをエマルニアに告げようとはしなかった。

心配させないために。

めったに外出しないエマルニアは、牧師が来ていることなど、知ることはない。


それが悲劇を呼ぶとは誰も考えていなかった。