しばらく、あたしはぼーっと部屋を見てたんだけど、やっぱりじっとしてられなくて散歩に行くことにした。
猶予期間含めてあと、1週間。
この町から消えるまでのリミット。
朝はボイコットしたいとか思ってたのに、今は仕方ないなんて思ってる。
あたしはエマルニアの分身でしかないんだってつくづく思い知らされる。
別に強制とかじゃないのに、綾瀬くんを諦めて別の自分になることを、心は良しとしてる。
本当は諦めたくない。
優里との海だって行きたい。
でも、ナンバーズであるあたしは、今日の夜に倉庫へ行ってしまうだろう。
そして、次の行き先を勝手に決められてしまうんだ。
公園の桜の若葉をみて、あたしがここに初めて来たときを思い出した。
綾瀬くんを見かけたのを覚えてる。
あのときはあんまり、気にしてなかったのに、なんでこんなに好きになっちゃったんだろう。
イケメンだから?優しいから?違う。
たぶん、綾瀬くんはあたしを二ノ宮 山花としてじゃなくて、No.23のあたしとして見てくれたから。
あたしを一人として見てくれたんだ。
泣きそうになった。
上を向いて涙が垂れないようにする。
ああ、空はいつ見ても綺麗だ。
どこにいてもどんな時でも、空は繋がってるってよく言うけど、あたしにはあたしの視界分の空しか見えない。
だから、繋がってるなんてどうしても思えないんだ。
涙が引っ込んだから、また歩き出す。
綾瀬くんを好きになって2年。
せっかくだから、綾瀬くんに告白してからいなくなろう。
いや、せめて、卒業までは一緒にいさせてもらおう。
firstに、そう言おう。
あたしは決心して大きく深呼吸をした。
もう、結構遠いところまで来てしまったらしい。
夕日が沈みかけている。
あたしは来た道を引き返し、自宅へと急いだ。
