両親の記憶をなくしていた私は、お墓参りをするのも初めてだった。

それは、郊外の霊園にあった。
広々としてとても綺麗なところで、まるでピクニックにでも来た気持ちになる。

それでも、車から降りた私は、少し戸惑って響哉さんの手を掴んだ。

「ねぇ――。
 パパとママ、私があまりにも遅すぎて、私のこと忘れちゃったり――してないかな?」

「そうかどうか、聞いてみようか」

響哉さんはふわりと笑う。

「万が一忘れてたら、俺が、思い出させてあげるから心配しないで」

くしゃりと頭を撫でられて、私も勇気を持って足を進めた。

お墓がとても綺麗なのは、きっと両親が面倒を見てくれているからだ。