「少し、彼女と二人で散歩してきても?」

私が泣き止んで落ち着くのを待ってから、お父さんがそう切り出した。

「どうぞ。
 紅茶でも飲みながらのんびりお待ちしています」

響哉さんはそういうと、ヘンリーさんにお茶の準備を頼んでいた。

私は啓二お父さんの申し出に従って、二人で庭に出た。

新緑の匂いが心地良い。

この年になると、お父さんと二人きりで歩くなんてなかなかないことで、なんとなく照れくさい。


「ある日急に須藤さんがうちにやってきて――。
 真朝の記憶を取り戻すべきだと、熱弁をはじめたんだ」

お父さんは、ぽつりとそう喋りだした。