「梨音はどうなったんですか?」
私は話を逸らすことにした。
先生は、少し深刻な顔になる。
「あの、オダってやつに捕まってたのよね?」
こくりと頷いた。心臓がきゅうと痛む。
「誰が梨音を助けたの?」
「須藤家のバトラーである、ヘンリー」
え、あの、にこやかで穏やかな空気を身に纏った好々爺(こうこうや)が――?
「あの人、空手好きが高じて、道場破りがしたくて、来日したんだよ。
知ってた?」
先生が、のんびりした口調でそういった。
「――うっそ――。
全然そんな風には見えないけど――」
驚く私に、先生は笑顔を見せる。
「強そうなヤツが強くたって、ちっとも面白くない。
そうだろう?」
そりゃそうかもしれないけど――
「じゃ、行ってみようか?」
「いいの?」
このまま、握手会が終わるまでここにいるのだと思い込んでいた私は驚いて先生を見上げた。
「待ってろって言われなかったし、大丈夫だろ」
言うと、さっさと部屋を出て行くので、私は慌ててその背中を追った。
私は話を逸らすことにした。
先生は、少し深刻な顔になる。
「あの、オダってやつに捕まってたのよね?」
こくりと頷いた。心臓がきゅうと痛む。
「誰が梨音を助けたの?」
「須藤家のバトラーである、ヘンリー」
え、あの、にこやかで穏やかな空気を身に纏った好々爺(こうこうや)が――?
「あの人、空手好きが高じて、道場破りがしたくて、来日したんだよ。
知ってた?」
先生が、のんびりした口調でそういった。
「――うっそ――。
全然そんな風には見えないけど――」
驚く私に、先生は笑顔を見せる。
「強そうなヤツが強くたって、ちっとも面白くない。
そうだろう?」
そりゃそうかもしれないけど――
「じゃ、行ってみようか?」
「いいの?」
このまま、握手会が終わるまでここにいるのだと思い込んでいた私は驚いて先生を見上げた。
「待ってろって言われなかったし、大丈夫だろ」
言うと、さっさと部屋を出て行くので、私は慌ててその背中を追った。