――それはつまり。
  忙しいからあなたの相手をする暇はないわよってこと――よね?


私はモニターの前に座る。
光沢のあるグレーのスーツをほどよく着崩し、いつもとは、また違う感じで髪を整えている響哉さんは、眩暈がするほどかっこよくて、私はモニターに釘付けになってしまう。

マイク片手に、椅子に座って脚を組みながら、耳に心地良い声で流暢な英語を紡ぎながら、次の映画の説明をしていた。

私がモニターに釘付けになっていると、別のスタッフ二人連れが、やたらとテンション高く部屋に戻ってきた。

「葛城さんっ。
 私、今、リチャードソン監督とすれ違っちゃいましたっ」

「もしかして、キョーヤ・スドーの次回作はリチャードソン監督の作品ですか?」

「そんな邪推は後にして。
 ほら、お昼になる前にお弁当の準備、最終チェックお願いね」

春花さんに早口に指示されて、はぁい、と、二人のスタッフは部屋から出て行った。