「ワタシ、ニホンゴ ワカリマセン」

男は、片言の日本語を口にする。

――狐と狸の化かしあい――?

そんな言葉が私の脳裏を掠めていった。

「But I know ODA.」(でも、オダのことは知ってます)

男の青みを帯びたグレーの瞳に、鋭い光が差した。

先生は、人当たりの良い笑顔を携えたまま肩を竦めて足を進める。


「I'm the mastermind.」

背後から響く、地を這うような一際低い声に、先生は足を止めた。

「マスターマインドって?」

私の問いかけと、先生がため息をつくのはほとんど同時だった。

「黒幕ってこと」