「離してっ」

振り払おうとする私を、再び先生が抱き寄せる。

「駄目だよ、真朝ちゃん。
 今は俺の恋人として振舞ってくれないと」

「離してくださいっ。
 言ってる意味が分かりません」

「それは困ったな」

全く手の力を緩めずに、ため息をつく。

「それじゃ、折角彼女が身代わりになってくれた意味がなくなってしまう」

「――身代わり?」

「そう。
 須藤 響哉の彼女は磯部 梨音。
 ヤツはそう勘違いしていたから、そのまま利用させてもらった」

「――どうして?」

「駐車場で張って、丁度見かけたのが二人が抱き合ってるところだったからじゃない?」

そこまで言われると、なんだか、冗談にも思えなくなったので、私は仕方なく先生に従うことにした。