Sweet Lover

スカイラインの助手席に、私は祈るような思いで座っていた。

「でも――。
 今日はイベント初日なんですよ。響哉さんが居なければ、騒ぎが起きるんじゃないんですか?」

「だから、当然普通の顔してそこに居るに決まってるだろう?
 別に、拉致監禁されたってわけじゃない」

流れる景色を眺めながら、ふと、思いついたことを口にする。

「先生は昨夜、響哉さんに逢ったんですか?」

「そう」

「誰に何を脅されているんですか?」

「さぁ。
 それを確認に行こうね」

先生は、コンビニに弁当でも買いに行こうか、というくらい軽い口調でそう言うと、窓を開けて煙草に火をつける。

吹き込む風に、髪が揺れた。