Sweet Lover

「さぁ、懐かしい話はこれでおしまい」

先生は言うと、花壇から立ち上がる。

「そろそろ夕食の時間だ。
 ――エスコートしますよ、お姫様」

差し出された腕に一瞬躊躇ったけれど、まぁいいかと思い腕を絡める。

「明日、響哉のイベントに行く?」

「まさか。
 危険だから顔を出すなって言われたわ」

思わず敬語を崩してしまうのは、その姿が響哉さんそっくりだから。

でも、私が行くのは危険ってことは――。響哉さんも危険ってことじゃないかしら、と。

心に潜む不安までは、口に出せない。

「ただの握手会が危険だって?
 随分と、過保護なものだな」

先生は冗談めかして笑い飛ばす。

「大丈夫。
 響哉は大げさなだけだよ」

――全く同じ容姿でそう言われても――

なんか変な感じ、と私も釣られて相好を崩した。