佐伯がそこまで動揺したのは別に、彼女のことを清純派だと信じていたからではない。
ただ――
+++++
「響哉との子供かと思ったら、動揺したね」
先生はそう言って、苦笑を浮かべた。
「どうしてですか?」
「いや、自分でもそこまで驚くなんて思わなかったけど。
ほら、アイツに子供が出来たら俺のモラトリアムも終わっちゃうわけじゃない?
なんてったって、影なんだし」
「モラトリアム?」
首を傾げる私に先生は続ける。
「社会的義務や責任を課せられない猶予期間のこと。
つまり、大学生の間は、須藤家に縛られず自由で居られると心のどこかで思い込んでいたみたい。
それが、途中で奪われるなんて――嫌だったんだろ、きっと」
俺も当時は響哉並みにガキだったってことさ、と、苦笑混じりに呟いてから、先生はまた話を続けた。
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ただ――
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「響哉との子供かと思ったら、動揺したね」
先生はそう言って、苦笑を浮かべた。
「どうしてですか?」
「いや、自分でもそこまで驚くなんて思わなかったけど。
ほら、アイツに子供が出来たら俺のモラトリアムも終わっちゃうわけじゃない?
なんてったって、影なんだし」
「モラトリアム?」
首を傾げる私に先生は続ける。
「社会的義務や責任を課せられない猶予期間のこと。
つまり、大学生の間は、須藤家に縛られず自由で居られると心のどこかで思い込んでいたみたい。
それが、途中で奪われるなんて――嫌だったんだろ、きっと」
俺も当時は響哉並みにガキだったってことさ、と、苦笑混じりに呟いてから、先生はまた話を続けた。
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