Sweet Lover

あれ、と、違和感を覚えて口を開く。

「じゃあ、どうして私には存在を教えたんですか?」

決まってんだろ、と、先生は言う。

「響哉のワガママで」

そうして、長い脚を持て余すように組んで、くすりと笑った。

「心配なんだよ、きっと。
 真朝ちゃんが俺と響哉を間違えるんじゃないかって」

「響哉さんって、ものすごい自信に満ち溢れているようにしか見えないのに、時折ひどく臆病になりますよね」

「限度があるんだよ。
 ある程度までは、ものすごく自信があるのに、それを超すと途端に及び腰になる。
 須藤家を継がずに、アメリカに行くとか。
 婚約者という立場は変えないままに、君を置いてアメリカに戻るとか――。
 枚挙に暇(いとま)は無い。
 ま、つまりはいつものパターンってヤツ」

懐かしさを覚えたのか、響哉さんがよくそうするように、先生も瞳を細める。