Sweet Lover

彼の綺麗な手が、私の頭に乗る直前。
それをやんわりと掴んでみせる。

「おや。
 積極的だね」

響哉さんは形の良い瞳を細めて笑う。


ううん。
本当に、彼にそっくりな笑顔。

――けれども。

「先生。
 今日はどうしてそんな格好しているんですか?」

キスでもするんじゃないかと思うくらい近づいた唇から遠ざかりながら、あくまでも軽く問う。

「――マーサ、何言ってるの?」

魅惑的な笑顔、艶やかな声。
愛しさを詰め込んだような瞳に、弧を描く紅い唇。

どこをどう見ても、須藤 響哉。


――でも、違うの。
  私には、分かる――