Sweet Lover

『そんなことないわよ。
 思っているよりずっと、子供なんだから』

ママの声が、柔軟剤の効いたバスタオルみたいにふんわりと柔らかく響いた。

『ごめんね、マーサちゃん』

響哉さんの声が、優しく響く。
でも、私はパパに抱きつくことに夢中になっていた。

『あら、本当は真朝、パパが大好きなのね』

『うんっ。
 まあさ、パパだいしゅき。
 大きくなったらパパとけっこんするのっ』

舌足らずな無邪気な声が広いとは言い難いリビングに響く。


『でも、それはムリだからキョー兄にしとくのっ』

『どうして無理なの?』

響哉さんの問いに私は、得意げにこう答える。

『だって、ママがひとりぼっちになるでしょう?』