Sweet Lover

「あのね」

広すぎる須藤家の庭で、紫煙を吐きながら、先生は眉間に皺を寄せる。

「結婚相手にそこまで気を遣ってどうすんの。
 誰だって、その思考回路は生き様に左右されているに決まってるじゃない。
 真朝ちゃんがそう思うなら、そう言ってやればいい」

「でも、先生は知ってるんでしょう?
 響哉さんと響さんの確執は根深いってこと――」

「知ってるとも。
 それを全部話すとちょっとした昼ドラを見ている気分になれるぜ」

「だから。
 なんとなく想像できるから――。
 私は響哉さんの考えを尊重したいんです」

「じゃあ、そこまできちんと言ってみれば?
 ねぇ、最初からそんなに遠慮してどうすんの。
 それに、そうは見えないかもしれないけどアイツ、真朝ちゃんの倍以上生きてるんだから、少しくらいは、包容力ってもんがあると思うよ」

――いや、ないか。
  と、最後に付け加えて苦笑を浮かべるあたり、あまり説得力はないけれど。

先生の言いたいことはなんとなく分かる。