「あら、素敵じゃない。
 婚約パーティーなんて。私なんて夜逃げした人間だから――。
 そういう日の目のあたることには縁がなかったな」

さっぱりきっぱり、響さんはそう言い切った。

「真朝ちゃん、素敵な式にしましょうね。
 私、テンション上がっちゃうなー」

響哉さんは何も応えず、部屋から黙って出て行った。


――胸が痛くなる。
  折角、親がいるんだから、仲良くすればいいのに――って、余計なことを言いたい自分が現れる。

人にはそれぞれ事情があるし、私の想いを押し付けることなんて出来るわけ無いのに――。


それでも。
折角母親が居るのに、まともに言葉も交わせない響哉さんは、間違っている気がして仕方が無かった。