「いいけど――。
 また、誰かに追いかけられても困るでしょう?」

「この前、カーチェイスした白いカローラは、例の記者、オダとカメラマンだったらしいよ。
 ヘンリーが釘をさしておいてはくれたらしいけれど」

カルロスの件があるからか、響哉さんは煮え切らない口調でそう言った。

「――とにかく。
 もう、二度とマーサをあんな目に合わせたくないんだ。
 その為なら、俺は何だってする。
 仕事を辞めて、ここを継げっていうなら――、それでもいいって」

そこで言葉を区切って、響哉さんは私を腕に抱いてベッドに再び寝転んだ。


「――決めたんだ」

強い決意を告げるには、優しすぎる声で、響哉さんはそう囁いた。
そして、私の左手薬指できらきら輝く指輪を撫でながら耳に唇を近づける。


「Will you marry me?」(結婚しよう)