「そう、テディベア。
って言っても、最初の一体目は誕生した日にあげたものじゃないんだ。
マーサが自分でこれだのあれだのいえるようになった後で、オモチャ屋さんで自分で選んだんだよ」
「……私が?」
まるで、眩しいものでも見るように懐かしそうに目を細めて響哉さんが笑うと、エンジンを切った。
いつの間にか、車はうちの玄関へと着いている。
響哉さんはくしゃりと私を頭を撫でた。
「本当に何も覚えてないんだな」
「――ごめんなさい」
「マーサが謝ることじゃない。
――このまま、帰ってもいいよ」
「え?」
突然の言葉に私は響哉さんの顔を見上げた。
複雑な感情を全て飲み込んだ後の、甘い笑顔が私を見ている。
「確かに、小さい頃の君の気持ちを人質のようにして俺の傍に置くのはフェアじゃないもんな。
婚約の件は、君が二十歳になった時、改めて検討しなおそう」
「――な、に言ってるの?」
私は敬語も忘れてそう言った。
突然現れて、私の感情を散々かき乱したくせに。今更そんなこと――
って言っても、最初の一体目は誕生した日にあげたものじゃないんだ。
マーサが自分でこれだのあれだのいえるようになった後で、オモチャ屋さんで自分で選んだんだよ」
「……私が?」
まるで、眩しいものでも見るように懐かしそうに目を細めて響哉さんが笑うと、エンジンを切った。
いつの間にか、車はうちの玄関へと着いている。
響哉さんはくしゃりと私を頭を撫でた。
「本当に何も覚えてないんだな」
「――ごめんなさい」
「マーサが謝ることじゃない。
――このまま、帰ってもいいよ」
「え?」
突然の言葉に私は響哉さんの顔を見上げた。
複雑な感情を全て飲み込んだ後の、甘い笑顔が私を見ている。
「確かに、小さい頃の君の気持ちを人質のようにして俺の傍に置くのはフェアじゃないもんな。
婚約の件は、君が二十歳になった時、改めて検討しなおそう」
「――な、に言ってるの?」
私は敬語も忘れてそう言った。
突然現れて、私の感情を散々かき乱したくせに。今更そんなこと――


