洋館を思わせる建物に足を踏み入れる。
もちろん、玄関で靴を脱ぐ――なんてことはない。

灯りの下で見る響さんは、年齢を感じさせない若々しさがあり、その艶やかな黒髪や細い目元は、響哉さんによく似ていた。

けれども、その唇は冷笑を携えている――。
見るものを凍らせそうなほど、冷たい微笑が彼女全体の雰囲気をきついものに染め上げていた。

「あら、欲に基づいた行動しか出来ないのはケダモノのすることよ」

私をけなしているのか、宥めてくれているのか――。

彼女の突き放すような口調からは、それすらも判断が出来ない。

「ヘンリー。
 二人に夕食を。
 真朝さん、ミネストローネくらい、飲めるでしょう?
 それから、頼太くんは普通に食べられるわよね?」

有無を言わせぬ口調に、仕方なく頷いて、勧められた席へと腰を下ろす。

その食卓は、余裕で二十名ほが食事を取れるような広さがあった。