「だったら、少しだけでも何か食べたほうがいい。
 もし、響哉の母親が起きていたらちょっと大変だろうけど……。
 なんとか乗り切って」

小さな声で、そう囁かれる。


――大変って、何が?

その質問をする前に、車は玄関の前へと横付けされた。

外からドアが開けられてびっくりする。
顔をあげたら、何食わぬ顔でそこにヘンリーさんが居た。

そうして、感じの良い笑顔を浮かべる。

「お待ちしておりました。
 真朝様」

「見ての通り、彼女は疲れている。
 出来たら、響様とのお目通しは明日にしてもらえない?」

運転席から降りた佐伯先生がそう切り出した。