『マーサのこと、好きってこと?』

言っている意味が分からないので、私は都合よく話をまとめる。

『そうだよ』

幼い私はキョー兄ちゃんに躊躇いも無くキスをして、再び眠りに落ちた。

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今、普段の響哉さんを見ていても、左利きだなんてことはまるで分からない。

でも――。

だから、今でも私を右側に置くために、外車に乗っているのかしら。
さすがに、それは考えすぎ?。

その理論で行くと、佐伯先生は右利き――なんて、関係ないか。


「目が醒めた?」

ぼんやりしていたら、右側から、声がした。

「はい」

「丁度良かった。
 もうすぐ、須藤邸に到着だ。
 体調は?」

心配そうな声が響く。
私はかぶりを振った。

「大丈夫です」

「そう」

先生はひどく困った顔で私を見て、直後に、何かを諦めたように微笑を浮かべた。