「してる、よ」

そこまで心配しなくても、と、呆れそうになる。

響哉さんはくすりと笑って言葉を続けた。

「冷蔵庫の中にランチ作ってあるから、食べてね。
 夕食までには頑張って全て終わらせて帰るから」

「……社長、それは無謀です」

隣で、春花さんが困った声をあげていた。

「なんとかしろよ。
 お前の仕事だろう?」

「スケジュールを詰め込みすぎるからいけないんじゃないですかっ。
 いつもの社長らしくない――」

「俺がフィアンセと電話しているときくらい、黙っててくれない?」

いつもの二人と変わらないテンポの良い会話に、つい聞き入っている私に、響哉さんが改めて声をかけた。

「とにかく、なんとしてでも帰るから。
 外に出るなとは言わないけれど、くれぐれも気をつけて」

響哉さんは念を押すと、私の返事を確認してから、電話を切った。