私はぼーっと、唐突に左手の薬指につけられた綺麗な指輪を眺めていた。

きっと、顔はにやけているに違いない。
思いがけないサプライズは、私をハッピーな気分にしてくれた。

でも、私の指のサイズなんて、いつ、どうやって知ったのかしら。

……ああ、そう言えば去年、美術の時間にアクセサリーを作ったっけ……

『折角の機会だから皆さん、自分の薬指のサイズも測って見ましょうか?
 今度恋人に指輪を強請るときに役立つかも知れませんよ』

美術の先生が思いついたように、笑いながら言ったっけ。

そうして、教室を歩きながら、まるで偶然のように私が指のサイズを測っているときにそこにいて――。

『花宮さんって指が細いなーって思ってたけど、6号サイズなのかー。
 羨ましいわ、先生なんて指、太くって』

『でも、指が細くても指輪を強請る相手なんていませんけど』

よくある、なにげない会話だった。
気にも留めてなかった。

――でも。
  もしかして、アレは、響哉さんの差し金――?