響哉さんが最後まで言葉を言い終わらないうちに、部屋中に漂う甘い空気を引き裂くかのように、ケータイ電話が鳴り出した。


「Dammit!」

響哉さんは頭の中が英語モードになっているのか、吐き捨てるようにそう言うと、肩を竦めて電話に出た。

「起きてる。
 分かってるって。……時間がないんだろ?
 でも、後5分くらいくれても良かったのに……。
 いや、こっちの話。
 分かった、ちょっと待って」

響哉さんは、テディベアを私に渡す。

「こんなリングでプロポーズするなって言う、神のお告げかな、きっと。
 これは、遅すぎた誕生日プレゼントとして受け取って」

頷くと、響哉さんはクマが持つ小さな箱を開けて、きらきらと輝く幾つもの小さなダイヤが埋め込まれているシルバーの指輪を取り出した。

躊躇いも無く私の手をとって、丁寧な仕草で左手の薬指にはめてくれた。

私はドキドキしすぎて声も出ない。