Sweet Lover

「私は別に、大丈夫だから、リビングに戻ったら?」

自分の口から出た声は、明らかに拗ねている子供のものだった。

響哉さんは困った風に眉根を寄せる。

――どうせ、私なんてどんなに頑張っても響哉さんには敵わないもの。

「ミーティング、頑張って」

私は彼の困った顔に気持ちを奪われないうちにと、くるりと踵を返した。

「……困ったな」

響哉さんは小さく呟いた。

そして――

歩き出した私を後ろからふわりと抱きしめた。

「俺だって、全部投げ出してマーサと一緒に過ごしたいよ――」

切なさの篭った声音に、心臓が鷲掴みにされる。

「マーサの体調なんて気遣わず、朝までずっと――したいってワガママ言って許されるなら――。
 そうしたい」