「真朝ちゃんって、本当に社長が居ないと駄目なのね」

疲れた顔に、子供を見守る母親のような笑顔を浮かべながら春花さんが聞いてくる。

「……え?」

「でも、少しは彼の仕事について理解してあげてね。
 でないと、芸能界から引退しないといけなくなるわ。もっとも、それこそが真朝ちゃんの望みなのかもしれないけれど……」

春花さんは、ほとんど独り言のようにそう呟いている。

どんどんエスカレートしていきそうなので、私は途中で話を遮った。

「えっと、違います。
 勘違いなんです。
 響哉さんが、私のせいだって言ったんだと思うんですけど、私は今朝、響哉さんが朝早く出かけないといけないことさえ知らなかったんです。
 それに――。イベントで握手することだって、テレビで知ったし。
 それを中止して欲しいなんて、思ってないし、言ってません」