うちに入ってきた春花さんは、本当に疲れきった顔をしていた。

「……私、何か飲み物でも入れて来ましょうか?」

二人のミーティングの邪魔をしたくなくてそう言うと、響哉さんがふわりと私の頭を撫でた。

「飲み物だけじゃ足りないよ、きっと。
 俺が準備してくる」

「そんな、でしたら私が自分で――」

春花さんが口を開くと、響哉さんは苦笑を浮かべた。

「少なくとも俺が居る時は、うちのキッチンで芸術品を創作させる気なんてない」

……響哉さん、知ってたのね。春花さんが料理音痴ってこと……

それなのに春花さんに私の夕食を作るように言ったなんて、酷くない?

とはいえ、今さらそれについて協議しても仕方が無い。

残された私と春花さんは、黙ってテーブルにつく他なかった。