「どうしても?」

……だからっ。
  そうやって、いつも切れ長の瞳をわざとのように丸くして、留守番を嫌がる子犬のような瞳で私を見つめるのは反則だって――。

私が返事をしかねていると、お姫様の命令なら仕方無いな、と呟いて額に触れるだけのキスをして、実荒れていた服と髪を手早く整えてくれる。

そうして、乱暴に床に放り投げたまま、まだ鳴り続けているケータイ電話を取り上げた。

「I'm very busy.(すっげー忙しいんだけど)」

「ソーワット?ミーツー!(だからなんですか、私もですっ)」

受話器の向こうからは、響哉さんに合わせたのか、片言の英語で怒鳴る春花さんの声が、漏れてきた。