「大丈夫。
 どうせ、春花だし――。分かってくれるって」

響哉さんは熱っぽい吐息を私の耳に吹きかける様に囁いて、誘惑してくる。


けれど。


このままじゃ、やっぱり私が『須藤響哉の仕事を邪魔するろくでもない女』って思われるだけじゃない?
少なくとも、春花さんからは。

「駄目、響哉さん。
 だったら尚更出てあげないとっ」

私は抱き寄せようとする彼の、厚い胸板を押して、残り少ない理性をかき集めてそう言った。

響哉さんは、動きを止めると肩を竦めて、水飴を思わせるほど甘い湿り気のある瞳で私の顔を覗きこむ。