もう、彼が両親と同い年で私より20歳も年上だとか、有名な人気俳優だとか、どこぞの財閥の御曹司だとか――。

そんなこと全てが、どうでも良くなっていた。

ただ、今、私を宝石のように綺麗な瞳で愛しそうに見つめてくれているこの人に、本能の赴くまま全てを委ねてしまいたい。

響哉さんがそっと私を抱き上げようとした、その時。


ピンポーン、という呼び鈴が、甘ったるく、既に湿り気すら帯びてきていた部屋の空気を、いとも簡単に引き裂いた。

「――無視しとく?」

ついでになり始めたケータイ電話を、いつものように乱暴に投げ捨てて、響哉さんが私に囁いてくる。

強く、甘い誘惑がシュークリームの皮の様に私をしっかり包み込む。