それなのに――。

集中できないのは響哉さんのせい。

これじゃ、まるで我が侭なのは私じゃない――。

「響哉さん」

唇が離れた瞬間、抗議をしようと名前を呼ぶ。
けれども、それが掠れた声にしかなってないことには、薄々私も気づいていた。

「なぁに?」

気だるいと表現しても良いような声で囁くと、ごく自然
に私をソファに押し倒していく――。

「キスだけじゃ、足りないよね――分かってる」

催眠術にでもかけるかのように、甘い声でそう言うと、慣れた手つきで私の髪をかきあげて、露になった頬に唇を押し当てる。