Sweet Lover

「私は、家のことなんて省みずにアメリカなんかに行ってしまう響哉様の方がずっと趣味が悪いと思いますけどね」

にこにこと、人好きのする笑顔を浮かべたまま、ヘンリーさんは鋭いことをざっくりと言い放った。

響哉さんはふぅと息を吐く。

「お前は大英国贔屓だもんな」

……え?

「そうですよ。
 折角私が吹き込んだQueen's Englishが台無しです」

……ヘンリーさん?
  響哉さんがイギリスに行くなら別に、須藤家を捨てても良かったんですか?


どこかがずれているような会話を耳にして呆気にとられている私を、響哉さんが招く。そのまま空いている椅子に座った。