Sweet Lover

「……は、はじめまして」

何故か私の日本語の方が片言になりそうだわ。

部屋に入った私に、彼は丁寧な仕草で頭を下げた。

「ヘンリーと申します。
 顔色が優れないようですが、何かございましたか?」

「ああ、そうだ。
 マーサにレモン水を作ってあげなきゃ」

響哉さんはするりと抜け出した。どこでもいつでもマイペース。

えっと、二人きりにされても困るんですけど。

ヘンリーさんは、やや青みを帯びたグレーの瞳で柔らかく笑うと、私を椅子に誘(いざな)ってくれた。

好々爺(こうこうや)という言葉がぴったりの、素敵なおじいさま。

仕立ての良いスーツが身体によく馴染んでいた。