Sweet Lover

響哉さんは携帯電話を取り出した。

もしかして、響哉さんって情緒不安定なのかしら――。

あらぬ疑いを抱きその顔を見上げると、眉間の皺を無理矢理消して、笑って見せてくれた。

「春花。
 ――そんな話は後でいい。
 今、何処に居る?
 そうか。
 ――ああ、気が向いたらな」

ものすごく高圧的かつ一方的に話をし、電話を切ると同時に響哉さんは素早く私を抱き寄せた。

「どうしたの?」

響哉さんは大きな手のひらで私の唇を塞いでから、耳の傍で囁いた。

「叫ばないでね、マーサ」

他に選択肢の無い私は、こくりと頷く。
だいたい、こんな風に口をふさがれていたら、叫びたくても叫べないじゃない。