Sweet Lover

「あのねぇ、限界っていうものがあるに決まってるでしょっ」

あんな暴走車に揺られて、平気だ、なんて人の方が少ないに決まってる。

「そう?
 俺、初めてやってみたけど、結構平気だったよ?
 小回りきかなくてうんざりしたけど」

エレベータの中で響哉さんがしれっと言う。

「え?
 さっき、映画でやったって言ったじゃない」

目を見開く私に、響哉さんは不思議そうに応えた。

「映画にそういうシーンがあったって言っただけ。
 もちろん、スタントマンがやったに決まってるだろう?」

当然の顔で、響哉さんがきっぱりそう言い切った。