Sweet Lover

響哉さんの手が背中にある。

別に、トイレの中まで付き添ってくれなくても良かったのに――。

「大丈夫?」

トイレの水を流す私に、響哉さんが声を掛けてくる。
私はそれに頷いてから、口をゆすいだ。

鏡に映る自分の顔は、相当青ざめている。けれども――。

その後ろに見える響哉さんが、どうしようもなく心配そうに私を見ているので、それはそれで困ってしまう。

「だいじょう……」

無理矢理口角を引き上げて振り向いた私を、響哉さんが抱き締めた。

「車で酔ったことがないっていうから、つい――」

響哉さんは小さな声で弁解した。