Sweet Lover

「白のカローラ?」

私は首を傾げる。

「そ。ずっと昔、目立たない大衆車として尾行によく使われてたらしいよ?
 今ならよっぽどプリウスの方が目立たないと思うけど」

響哉さんは軽口を叩く。

「それで……どうするの?」

響哉さんは、心配そうな私を見て、「大丈夫、心配しないで」と言ってふわりと微笑んだ。

「マーサに気づかれないうちにまきたかったんだけど……。
 仕方ない。
 車酔い、しない方?」

「車酔いは、まだ、したことないけど――」

それは良かった、と呟くや否や。

表情を引き締めた響哉さんが、ぐいっとアクセルを踏み込んだ。