Sweet Lover

なかなか家につかない――ということに私がようやく気がついた時、車に乗ってからどれだけの時間が経っていたのだろう――。

運転席を見れば、響哉さんは時折バックミラーに視線をやりながら、ため息をかみ殺していた。

「……何かあったの?」

「……大丈夫、って言いたいところなんだけど。
 さっきから、ずっと、つけられてる」

急に現れた非日常的な物騒な言葉に、私はぞっとした。

「誰に?」

「……さぁ。
 分かってんのは、いまどき逆に目立つような白のカローラに乗ってるってことくらいだ」