Sweet Lover

「困らせてるのはきっと、俺の方だね。
 ゴメン、マーサ
 俺の人生に、君を巻き込んでも、……いいかな?」

遠慮がち、躊躇いがちの声に、私は即座にこくりと頷いた。

こんなに巻き込んだ後に、何を今更と、思わなくもないけれど、彼のどことなく緊張感を帯びた表情を前にして、軽口なんて挟めなかった。

「ありがとう」

掠れた声でそう言うと、再度私の頭を撫でて、車を出した。


置き去りにされた唇が淋しいと思ってしまう、けれど――。

私は今まで響哉さんにどれほどそういう思いをさせたのかと思うと、胸の奥がチクリと痛んでそれ以上何も言い出せなかった。