問題だったのは、多分。
俺が赤の他人だってことと、真朝が俺に懐きすぎたこと、くらいなものだ。

乳離れをした頃から、真朝はものすごく俺に懐くようになった。とにかく、四人で逢えば両親の手を振り払ってでも俺の傍に駆け寄ってくる。

真一の証言によれば、最初に喋った言葉は「キョウ」

もう少し大きくなった真朝の口癖は「キョー兄ちゃんのお嫁さんになるのっ」


彼女の想いは子供の戯言程度だったのかもしれない。
けれど、俺はそれを自分勝手に利用した――。


とはいえ、娘の言葉を真に受けた真一が、それをやたらといろんなものに書き記していたのには、正直、後になって知って驚いたが……。

もちろん、彼としては娘が大きくなって、好きな人の対象が変わるたびにそれ自体書き換えようと思っていたに違いなかった。


ただ、それが叶わなくなっただけで。