保健室に入ると、しぃ、と、佐伯先生が唇に人差し指をあてて私を見た。

その視線の先を辿れば、奥の机に突っ伏して、響哉さんが眠っていた。

形良く整えていた髪の毛が、今はさらりと流れている。

「叩き起こそうか?」

面白そうに先生が聞いてくる。これで私が頷いたら、迷いもせずに『叩き起こす』のだろう。

「寝せといてあげてください」

響哉さんが無防備に眠れる場所なんて、きっとそうたくさんはないから――。

「そお?」

つまらなそうに言うと、先生は乱暴に椅子に座って煙草に火をつけた。