――確かに、な。

今なら分かる。
どんなことだって、やはり、身に起きてみなければ分からないのだ。

それにしては、とも思う。
恋を知らなかったにしては、今まで恋愛映画で演じた俺の演技は上々だったのではないだろうか。


いかなるときも、感情に左右されてはいけないと、祖父が口うるさく言っていたっけな。

だから、俺は全ての感情を出来るだけ飲み込むようにして――もちろん、周りにそれを悟られないように、感情豊かなふりを装いながら――昨日まで、生きてきた。

けれども。
一瞬にしてそれを砕かれるなんて。

そんなことを思いながら、いつの間にか眠りに落ちてしまった。