「だけど、Dr. Brownには連絡しとけよ。
 予想より1年半も早く研究室に戻れそうだって――」

俺の言葉に、頼太は特に驚きもせずに、肩を竦める。

「俺のことなら心配すんな。
 先月、ようやく纏めたあげた原稿を送ったら、今すぐにでも戻って来いって騒いでたから」

なんでもないことのようにそういうが、第一線から離れても尚、現場の人間から戻って来いと言われるような原稿が書けることに舌を巻く。

そんな男をいくら、本人からの申し出もあったとはいえ第一線から遠ざけたこと自体、非常識なわがままだったのだろう。

「お前が時間をくれたお陰で、ようやく行き詰まりから解放されたよ」

俺の心の内でも読んだのか、さらりと頼太がそう付け加える。これだから、頭の切れる奴にはかなわない。