「だろ?」

今すぐにでもベッドに潜り込んで眠ってしまいたい欲求に耐え、渡された珈琲を胃に流す。

「……で、何?
 ついに恋に落ちましたっていう報告なら別に、いらねーぞ」

……お見通しってわけか。

胸に浮かぶのは珈琲よりずっと苦い想い。


恋が絡んで判断を誤る人たちを幾人も見てきた。

自分はまさか――。
そういう無様な感情とは無縁だと、信じてきたのに。

「しねーよ、ばーか」

呟いてみるものの、昨日と今日では何かが明らかに変わってしまったと認めないわけにはいかなかった。